~よくわかる大腸がんの基礎知識~

大腸がんのステージと治療を知る
大腸がんのステージと治療を知る » どんなことをする?大腸がん治療の種類 » 化学療法(抗がん剤)の種類

化学療法(抗がん剤)の種類

ここでは、抗がん剤を用いる理由や抗がん剤の種類について紹介します。

参照元:大腸癌研究会 もっと知ってほしい大腸がんのこと[pdf]

目的に応じて2種類に分けられる大腸がんの化学療法

ここ10年余りの間に、大腸がんの化学療法は劇的に進歩。かつては切除不能とされた大腸がんについても、化学療法を受けることにより平均余命が1年程度から3年程度に向上するなど、大腸がんの治療においては化学療法の存在がますます注目を集めています。

大腸がんにおける化学療法は、その治療目的に応じて「切除不能の進行・再発大腸癌に対する化学療法」と「術前後(周術期)補助化学療法」の2種類に分けられます。

現在行われている「切除不能の進行・再発大腸癌に対する化学療法」と「術前後(周術期)補助化学療法」について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

切除不能の進行・再発大腸癌に対する化学療法について

切除不能の進行・再発大腸癌に対する化学療法は、大きく「殺細胞性抗がん剤」と「分子標的抗がん剤」の2系統に分かれます。患者の状態にもよりますが、一般的に、これら2系統の化学療法を組み合わせて治療を進めていきます。

殺細胞性抗がん剤

殺細胞性抗がん剤には、大きく分けて、がん細胞中のDNAを標的にしてがん細胞に障害を及ぼす薬剤、および、細胞内にある微小管に作用してがん細胞に障害を及ぼす薬剤の2種類があります。

さらに殺細胞性抗がん剤はいくつかの種類に分かれますが、それらの中で代表的な薬剤がオキサリプラチン、イリノテカン、5-FU。これら薬剤に、その働きを助ける薬剤(ロイコボリン)を加えたものが、いわゆるFOLFOX療法とFOLFIRI療法です。

FOLFOX療法とFOLFIRI療法は、いずれも48時間かけて薬剤を点滴する治療法。そのため、従来は入院しての実施が必要でしたが、現在では入院せずともこれらの治療を受けることが可能となりました。中心静脈注射ポートとインフュージョンポンプという医療器具を用いることで、通院で治療を受けることが可能になったのです。もしくは、上記の器具を用いずに、外来による点滴と内服薬(カペシタビンまたはS-1)のみで治療を受けることもできます。

いずれの治療法を選択しても、抗がん効果には違いがないと考えられています。

分子標的抗がん剤

分子標的抗がん剤とは、がん細胞の増殖に関連する特定分子に作用させてがん細胞の増殖を抑える薬剤のこと。主に使用される薬剤には、ベバシズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト、セツキシマブ、パニツムマブなどがあります。

これら薬剤のうち、ベバシズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプトは、がん細胞に酸素や栄養素を供給している血管の成長を妨げることで、がん細胞の増殖を防ぐ薬剤。一方、セツキシマブ、パニツムマブは、がん細胞の表面にある増殖刺激の入り口をふさぐことにより、がん細胞の増殖を防ぐ薬剤です。

殺細胞性抗がん剤と分子標的抗がん剤の組み合わせ

殺細胞性抗がん剤は、積極的にがん細胞の消滅を図る化学療法。一方、分子標的抗がん剤は、がん細胞の増殖を抑えることを図る化学療法。それぞれの目的は異なりますが、これら治療法を同時進行で行うことにより、著しい治療成果を得られることが分かっています。

ここ10年余りの間に、大腸がんの化学療法が劇的に進歩した背景には、これら2系統の化学療法の併用がありました。

こうした治療法を適宜併用することで、切除不能とされたがん細胞が切除可能なサイズまで縮小できるようになったのです。

術前後(周術期)補助化学療法について

大腸がんの手術が可能な患者に対し、手術の前後に化学療法を行うことがあります。

ステージⅢの手術後に行われる術後補助化学療法

ステージⅢの大腸がん患者には根治を目指す手術が行われますが、この手術の後に一定期間の化学療法を行うことで、再発の可能性を抑えられることが分かっています。

大腸がんの化学療法に詳しい九州大学病院がんセンターでは、次のような化学療法が有効と説明しています。

5-FUとロイコボリン、内服薬のUFTとロイコボリン、カペシタビン、S-1のいずれかの治療や、5-FUとロイコボリンとオキサリプラチンを組み合わせたFOLFOX療法や、カペシタビンとオキサリプラチンを組み合わせたCapeOX療法を行います。

引用元:九州大学病院がんセンター「大腸がん:化学療法」

なお同院では、患者の状況により、ステージⅡの大腸がん手術においても、同様に術後字補助化学療法を行うことがあるとしています。

直腸がんの手術後に行われる術前補助化学療法

大腸がんの中でも、特に直腸癌については局所再発が問題となることがあります。この局所再発を抑える目的で、欧米では術前における化学放射線療法が行われるのが一般的です。

ただし日本では、欧米に比べると直腸がんの手術成績が良好なため、直腸がんの術前補助化学療法がおこなわれることは多くはありません。患者の状況に応じて選択的に直腸がんの術前補助化学療法が行われることもある、という程度です。

患者の状況によって個別で化学療法を選択

近年の臨床試験の成果により、患者ごとに適した抗がん剤、適さない抗がん剤が徐々に判明しています。その成果により、無効な抗がん剤を使用して副作用だけを被り、かつ無駄な治療費を支払う、などという事態を避けることができるようになってきました。

抗がん剤の適応を判定する検査

一部の抗がん剤(セツキシマブやパニツムマブ)に関しては、がん細胞のRAS遺伝子検査を行うことにより、事前に効果の有無を判定することができます。

またイリノテカンについては、UGT1A1遺伝子多型検査を行うことにより、臓器障害などの重篤な副作用の有無を判定することができるようになりました。

抗がん剤の適応に関する臨床試験は発展途上

九州大学病院がんセンターでは、抗がん剤の適応の判断についてより精度を高めるため、患者さんに対して臨床試験の参加協力を仰いでいます。

臨床試験に参加するには、事前に病状・体調等の審査を通過する必要があり、すべての患者さんが参加できるわけではありませんが、担当医から案内があった場合には、医学の進歩のため協力をご一考いただけますと幸いです。

引用元:九州大学病院がんセンター「大腸がん:化学療法」

臨床試験に参加することで、患者さんご自身の状態が改善するとは限りません。しかしながら、過去の患者さんの多くの臨床試験の土台の上に、現在のがん治療があることは確かです。

抗がん剤の適応試験については、まだまだ発展時途上。九州大学病院では、広く患者さんに臨床試験への参加協力を求めています。

代表的なレジメンと副作用

大腸がんの化学療法における各種のレジメン、およびそれぞれのレジメンにおける副作用について、大腸肛門病センター高野病院が公表している情報をもとにご紹介します。なおレジメンとは、簡単に言えば治療計画・治療設計図のようなもの。いかなる病院であっても、原則的なレジメンにのっとって大腸がんの化学療法を進めています。

代表的なレジメン

大腸がんの化学療法において採用される代表的なレジメンについて、以下「mFOLFOX6」「FOLFIRI」「XELOX」「アバスチン+XELOX」の4種類について詳しく見ていきましょう。

mFOLFOX6

【治療の流れ】
  1. 吐き気止めの薬を約30分間かけて点滴
  2. エルプラットとℓ-LVを同時に約2時間かけて点滴
  3. 5-FUの急速静注(約3分間)
  4. 約46時間の5-FUの持続点滴
治療の流れ

引用元:大腸肛門病センター高野病院「大腸がんの治療(化学療法)」

治療は2泊3日の入院で行われ、かつ2週間ごとに行われます。主な副作用として「しびれ」が見られることがあります。

FOLFIRI

【治療の流れ】
  1. 吐き気止めの薬を約30分間かけて点滴
  2. イリノテカンとℓ-LVを同時に約2時間かけて点滴
  3. 5-FUの急速静注(約3分間)
  4. 約46時間の5-FUの持続点滴
治療の流れ

引用元:大腸肛門病センター高野病院「大腸がんの治療(化学療法)」

治療は2泊3日の入院で行われ、かつ2週間ごとに行われます。主な副作用として「吐き気」「下痢」が見られることがあります。

XELOX

【治療の流れ】
  1. 吐き気止めの薬を約30分間かけて点滴
  2. エルプラットを約2時間かけて点滴
  3. その後自宅にてゼローダの服用(2週間)
治療の流れ

引用元:大腸肛門病センター高野病院「大腸がんの治療(化学療法)」

治療は2週間ごとに行われます。主な副作用として「しびれ」「手足症候群」が見られることがあります。なお「手足症候群」とは、手のひらや足の裏に発赤が生じたり、痛みを感じたりする症状。水ぶくれが生じることもあります。

アバスチン+XELOX

【治療の流れ】
  1. 吐き気止めの薬を約10-20分間かけて点滴
  2. アバスチンを約30-90分間かけて点滴
  3. エルプラットを約2時間かけて点滴
  4. その後自宅にてゼローダの服用(約2週間)
治療の流れ

引用元:大腸肛門病センター高野病院「大腸がんの治療(化学療法)」

治療は3週間ごとに行われます。主な副作用として「しびれ」「出血」「高血圧」が見られることがあります。

他に見られる副作用

  • 消化器症状:食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、便秘、口内炎、腹痛
  • 骨髄機能抑制:白血球減少、赤血球減少、血小板減少
  • 神経症状:しびれ、味覚異常
  • 皮膚症状:色素沈着、発疹、手掌紅斑、皮疹、落屑、脱毛
  • 眼症状:流涙、眼充血
  • その他:発熱、倦怠感、頭重感、尿量減少

引用元:大腸肛門病センター高野病院「大腸がんの治療(化学療法)」

化学療法を実施する際には、薬剤の種類に応じて事前に副作用の予防措置が採られますが、患者によってはやや強く副作用が現れるかも知れません。抗がん効果と副作用とのバランスを見つつ、医師が適宜判断して化学療法を進めていくことになります。

化学療法で使われる主な抗がん剤

フルオロウラシル剤

抗腫瘍効果を持つ、大腸がんの標準3剤として用いられている抗がん剤です。がん細胞の増殖を抑制することが可能。副作用として、下痢や出血性腸炎など消化器障害・めまいやけん怠感などの精神神経症状・脱毛や色素沈着などの皮膚症状が見られます。

ホリナートカルシウム/レボリナートカルシウム剤

抗がん剤の副作用を抑える働きを持っています。がん細胞の増殖を抑制することができるメトトレキサートという抗がん剤には、正常な細胞にも影響してしまう副作用があり、ホリナートカルシウム/レボリナートカルシウム剤によってがん以外の細胞を守ることが可能。ただし組み合わせの悪い抗がん剤があるので、服用する時には注意しましょう。

イリノテカン

DNAに作用する酵素であるトポイソメラーゼの働きを抑制して、がんが広がるのを防ぐ効果を期待できます。大腸がんの標準3剤とされている抗がん剤です。副作用として薬を投与した直後や日を空けて下痢を起こすケースがあります。敗血症のような感染症の可能性も少なくありません。

オキサリプラチン剤

イリノテカンやフルオロウラシル剤と同じで大腸がんの標準3剤の1つです。DNAの合成を阻害する働きがあり、がん細胞の増加を防ぎます。副作用に下痢や吐き気、手足のしびれなどあり、肝機能障害を引き起こすことも。まれに視力が低下するケースもあります。

ベバシブマズブ剤

2007年に世界で初めて承認された、血管を新しく作る働きを阻害する抗がん剤です。がんは増殖する時に新しい血管を作って栄養をもらっているのですが、このベバシズマブ剤で血管の生成を抑制するため、増殖スピードを抑えることが可能。ただし出血や血栓症などの副作用があるので、注意が必要です。

セツキシマブ剤

がん細胞が増殖する時に必要なタンパク質に攻撃して、がんの進行を抑制するセツキシマブ剤。切除が難しいがんや再発した大腸がんに効果的です。副作用として発疹がありますが、他の抗がん剤と比べると軽い症状です。

カペシタビン

投与すると腫瘍組織に吸収されて、フルオロウラシルに変化します。フルオロウラシルが腫瘍内で抗腫瘍効果を発揮するため、高い治療効果が期待できる抗がん剤です。副作用として吐き気・下痢などの消化器障害や、まれに心筋梗塞・不整脈などの症状が現れます。

イリノテカン塩酸塩水和物

がん細胞が活性化するのを抑制し、がんが広がるスピードを遅くすることができます。ただし、下痢や腸炎などの副作用を発症することも。白血球減少・血小板減少など骨髄機能が弱ってしまうため、免疫力が下がるリスクもあります。

テガフール・ウラシル配合剤

体内で徐々にフルオロウラシルへ変化するテガフールと、体内のフルオロウラシルが分解されるのを防ぐウラシルを配合したテガフール・ウラシル配合剤。フルオロウラシルの抗腫瘍効果を最大限に引き出して、がんを治療することができます。胃腸の粘膜や骨髄細胞にダメージを与える副作用があるので、投与する際には注意が必要です。

抗がん剤を用いる理由とは

切除が困難で治療が難しいため

手術で腫瘍を全て切除することができない場合、抗がん剤でがんの進行スピードを抑制。大腸だけではなく他の臓器へがんが転移していて、腫瘍を切除することが難しいような場合は、延命を目的に抗がん剤を使用することができます。15年ほどは前まで抗がん剤を服用しても6ヵ月しか延命することができないと言われていましたが、現在では2~3年と延命できる期間が伸びているようです。

ただし、抗がん剤には適応条件があります。それは下記にある5段階のPS(パフォーマンスステータス)うち0~2の評価が必要です。また、臓器機能が正常であることも抗がん剤を投与するためには欠かせません。

PSによる全身状態の評価
0 がんの発病前と同じ日常生活を問題なく送れる
1 激しい活動を制限されるが、問題なく歩行でき、家事や事務作業が可能
2 歩行や身の回りのことについてできるが、軽労働はできない
3 身の回りのことをある程度までしかできず、日中の半分をベッドかイスで過ごす
4 身の回りのことについて何もできず、介助が必要な状態

術後の再発を防ぐため

がんを切除した後でも目に見えない小さながん細胞が体内に残っている可能性があるので、抗がん剤を投与することで再発を防ぐことができます。特に再発の可能性が高いステージ3以上の方は、術後補助化学療法を受けるケースが多いようです。

術後の抗がん剤治療について詳しく知る

記事の参考にさせていただいた医療機関

九州大学病院

九州大学病院
http://www.gan.med.kyushu-u.ac.jp/index.php
院長 赤司 浩一
所在地 福岡県福岡市東区馬出3-1-1
TEL 092-641-1151
診療受付時間 8:30~11:00(初診)
休診日 土曜、日曜、祝日、年末年始(12/29-1/3)

がんセンター長 水元一博医師

1981年に九州大学医学部を卒業後、臨床と並行して研究活動や教育活動などに幅広く従事。専門は消化器外科学で、特に膵癌の研究分野では日本の第一人者として知られています。

大学病院での研究活動に加え、日本外科学会、日本癌学会、日本膵臓学会、日本消化器外科学会などに所属し各学会の研究をリード。日本外科学会からは指導医の資格も付与されています。現職は九州大学病院がんセンター長。

大腸肛門病センター高野病院

大腸肛門病センター高野病院
https://www.takano-hospital.jp/
院長 高野 正博
所在地 熊本県熊本市中央区大江3丁目2番55号
TEL 096-320-6500
診療受付時間 平日 8:30-11:30 / 13:30-16:30
土日祝 8:30-11:30
休診日 消化器外科・肛門科は年中無休

副院長/炎症性腸疾患センター長 野﨑良一医師

1983年、自治医科大医学部を卒業。のち熊本赤十字病院、玉名中央病院などの勤務を経て、1993年に高野病院に入職。医長、内科部長を歴任し、1995年より同院副院長を務めています。

専門は消化器がん。日本消化器がん検診学会、日本消化器内視鏡学会、日本大腸肛門病学会の3つの学会から専門医・指導医の資格を付与されている、消化器がんのスペシャリスト。世界で初めて経鼻内視鏡にて胃がん検診を行った医師としても知られています。

亀田総合病院

亀田総合病院
http://www.kameda.com/ja/general/
院長 亀田 信介
所在地 千葉県鴨川市東町929
TEL 04-7092-2211
診療時間 8:00-11:30 / 11:30-16:00
休診日 日曜、祝日、年末年始(12/30-1/3)

消化器外科主任部長 草薙洋医師

1986年、山口大学医学部卒業。のち同大学附属病院、高松赤十字病院、宇部興産中央病院等を経て、1997年より亀田総合病院に入職。外科部長等を歴任し、2013年より消化器外科主任部長に就任しました。

日本外科学会や日本消化器学会から、認定医・専門医の他に指導医の資格を付与されるなど、専門分野の診療に加えて後進の指導にも熱心。趣味は家庭菜園だそうです。

新潟県立中央病院

新潟県立中央病院
http://www.cent-hosp.pref.niigata.jp/
院長 長谷川 正樹
所在地 新潟県上越市新南町205
TEL 025-522-7711
診療受付時間 8:30~11:00
休診日 土曜、日曜、祝日、年末年始

消化器内科内視鏡センター長 船越和博医師

1988年に医学部を卒業。消化器内視鏡、消化器がん化学療法、消化器がん検診等を専門に、これまで大腸がんに限らず多くの消化器がんの診療にあたってきたベテランドクターです。

日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会の3つの学会の専門医・指導医、および日本大腸肛門学会の専門医資格を保有。また新潟大学医学部臨床准教授を務めるなど、後進の指導にも積極的なドクターです。

抗がん剤による副作用が不安…

抗がん剤を投与すると、下痢や吐き気、出血など副作用の不安や心配などが出てきます。その時は1人で悩みを抱えず担当の医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。専門的な視点や深い知識をもとに的確なアドバイスをしてくれますよ。また、全国に設置しているがん相談支援センターに悩みを打ち明けてみるのも1つの手です。がんでつらい時は1人で抱えずに、周りに相談してください。

副作用を和らげる研究結果が出ている成分を知る