大腸がんの術後に合併症になる可能性があることについてまとめています。種類やその症状・対処法などを記載しているのでぜひ参考にしてみてください。
参照元:藤田 伸、島田安博(2011)『国立がん研究センターのがんの本 大腸がん』小学館クリエイティブ.
参照元:福長洋介(2016)『よくわかる最新医学 大腸がん』主婦の友社.
参照元:高橋慶一(2010)『大腸がん 手術後の生活読本』主婦と生活社.
大腸がんの術後は合併症になることがあります。がん細胞を摘出しても、その後、何らかの原因によって大腸がんとは異なる症状が出てしまうのですが、合併症はがんに対する治療の効果には影響しないと言われています。合併症を起こすと、通常の入院期間より長くなったり、再手術しなければならなくなったりするので、注意が必要です。
手術の際に腸が外の空気に触れたり麻酔したりすることによって麻痺した状態が数日続きます。通常だとその後ガスが出て回復していくのですが、数日経っても腸がうまく動かなかったり、通りが悪くなったりする状態が腸閉塞です。ガスや便が腸から出なかったり、嘔吐やげっぷなどの症状が目立ちます。
食事の量を減らしたり、食事を一時的に止めたりすることによって、自然に改善されるのが普通です。もし改善されなかったら、鼻から腸へチューブを入れて治療を行います。
腸閉塞には、いくつかの治療があります。
■保存的治療
腸閉塞になると腸管に水分を取られるため、高度の脱水症状になります。飲食を抑えて胃腸を休めるとともに、水分管理をすることが有効です。必要な水分は点滴静注で補ったり、鼻腔から腸までチューブを挿入して腸の中の内容物を吸引して腸管内の圧力を下げたりします。
■イレウス管挿入
長い管のイレイウス管を鼻から挿入し、腸管の閉塞部まで入れる治療法です。痛みを伴うケースがありますが、腸閉塞の原因や状態を調べる効果があります。
■手術治療
保存療法でも症状が改善しない場合や、絞扼性イレウス(胆石や腫瘍、腹部手術などによる癒着などが原因で腸管が塞がれることで起こる)と判断された場合に行なわれます。近年は腹腔鏡という内視鏡器具を用いて手術を実施。消化管内の減圧を行ない腫瘍を腸管ごと切除し、残った腸管同士をつなぎ合わせるといった手術です。もしつなぎ合わせることができなければ、人工肛門をつくります。また、手術により繊維束が他の器官に巻き付いた場合はその部分を剥がしますが、腸管が激しく損傷していれば、腸管を切除しなければなりません。
血行障害を伴う際は、血行を再び動かすため、腸管のねじれや折れ曲がった部分を修正しますが、腸管が壊死した場合は腸管の切除、またはつなぎ合わせが行なわれます。
■腸閉塞の予防策
腸閉塞は、手術をするたびに再発するリスクが伴います。再発を予防するために行われているのが、「腹腔鏡下手術」。通常の手術は体に大きく傷をつけることが多いため、傷部に腸を癒着してしまい、腸管麻痺を引き起こすリスクが高まります。しかし、腹腔鏡下手術は癒着することがあっても傷は小さいため、癒着自体も小さくて済むのです。
このように腹腔鏡下手術は、身体を傷つける範囲が小さいため、負担が軽減され術後の合併症も少ない傾向にあります。
■食事療法
食事療法で腸閉塞を完全に予防することはできませんが、引き起こす確率を低くできます。食事の種類の制限はありませんが、食物繊維が多く含まれているものや消化しづらいものは腸閉塞を引き起こす原因となってしまうので控えましょう。
食事を摂る際は、以下のことを注意して下さい。
一度にたくさん食べ過ぎると下痢や腸閉塞を引き起こしてしまいます。特に退院あとの1、2ヶ月は徐々に量を増やし、1回の食事を腹7~8分に抑えましょう。
急いで食べると下痢の原因や排便の回数が多くなってしまいます。よく噛んで食べることを意識しましょう。
不規則な食事は便通が悪くなり、下痢や便秘などの症状を起こしやすくなります。
消化の悪いサツマイモや豆類、イカ、タコなどを食べ過ぎると下痢や腸閉塞の原因となります。ただし、少量であれば問題ありません。
大腸の手術後は少量のアルコール摂取であれば、特に問題ありません。ただアルコールを飲むと、食べ過ぎてしまう可能性があるので、注意が必要です。
一番多い原因とされるのが、腹部手術による癒着(腸と腹腔壁や、腸同士がくっつく)です。腸管がふさがったり、曲がったりします。近年では、進行大腸がんによる大腸イレウスが増加。また、寄生虫など外部からの異物が原因で閉塞になることもあります。閉塞症状は、消化管の運動による激しい痛み、腹部が膨れあがるのが特徴です。
腸に血液が十分に送れないため、腸が壊死して穴が開いたり、敗血症(血液に細菌が入りこんで全身に害をあたえる)になったりして、多臓器不全になってしまいます。
複雑性イレウスにより激しい腹痛に襲われてしまい、腸管全体の麻痺を引き起こすことも。腸の壊死が進むとお腹全体に腹膜炎が起こり、危険な状態に。この場合は緊急手術を行わう必要があります。
機能的イレウスには「麻痺性イレウス」と「痙攣性イレウス」があります。
麻痺性イレウスは腹膜炎や、血液中の電解質異常、各種中毒症状に襲われるのが特徴。
一風の痙攣性イレウスは特定の部分に延焼や結石発作による腸管への刺激が原因とされます。
腸閉塞と大腸がんは進行度を示す指標である、「ステージ」との関連性はありません。大腸がんを示すのは、大腸の壁に癌がどのくらい深く侵入しているのか(深達度)、どのリンパ節まで進行しているのか(リンパ節転移)、肺や肝臓などの臓器や腹膜まで転移(遠隔転移)しているかどうかによって決まるのです。腫瘍の大きさは、ステージを決める要素ではありません。
がんの末期は身体の状態とがんの進行度が関係していると考えられており、進行しても身体自体が元気であれば末期がんとは言えないでしょう。
手術によって腸を縫い合わせた際にうまく縫い合わすことができなかった場合の後遺症と合わせて腸閉塞があります。便が腸に多く残っていたり、腸に血液が通常通り流れなかったりすると発症してしまうようです。症状が軽い場合は口から物を摂るのを一時的にストップして安静に保つことが重要。もしお腹に便が広がり過ぎてしまうと、腹膜炎になり、再手術しなければならない場合もあります。
手術したときに入れたメスが原因で傷口が化膿してしまうことを創感染といいます。傷口が痛んだり、腫れたりするのが特徴です。また、赤みや熱っぽくなることも。大腸の手術では何度もメスを入れたり縫ったりするためどうしても菌が傷口につきやすい状態になってしまいます。そのため他の手術よりも創感染が起こりやすいと言えるでしょう。創感染が起こった場合は傷口を少しだけ開いたのち膿を出して治療していきます。そうすると、段々改善していきますよ。
肺は咳をすることによって、吸い込んだ細菌やウィルスなどを排出する仕組みになっています。しかし、大腸がんの術後は咳をすると腹部が痛むことによって、咳を控えてしまい結果的に肺炎になりやすくなってしまうのです。喫煙しているとそのリスクは高くなってしまいます。咳をしっかりする、深呼吸を定期的にすることによって肺炎予防に。術後も咳を止めずに行うようにしましょう。
腸閉塞や縫合不全、傷からの感染や肺炎などの合併症は、一度適切な治療をしてもらえれば、ずっと続くものではありません。術後に起こる一時的な症状なので、医師の判断にしたがって治療を進めていくと、改善されていきます。食事の管理や排便の管理などをしっかりと行い、QQLを高めていくことが心身の回復に繋がります。