大腸がんの治療の際、手術と並行して抗がん剤治療が選択されることがあります。抗がん剤治療には副作用があり、その中の一つとして挙げられるのが「便秘」。ここでは、大腸がんの抗がん剤治療によっておこる便秘について詳しく解説し、その対処法についてまとめています。
抗がん剤とは、これから広がる可能性のあるがん細胞や全身に広がっており手術によって取り除くことが難しいがんの治療に使われる薬剤。がんはがん細胞が増殖していくことにより広がっていきます。抗がん剤は、がんの細胞分裂を食い止めたり、増殖に必要な物質の産生抑制やがん細胞の死滅を促すことにより治療効果を発揮するもの。しかし、正常な細胞にも作用してしまうため、それが強い副作用となって現れてしまうことが多いのです。
大腸がんの治療では、手術後にがんが再発するのを防ぐ場合や、がんが進行し手術が難しい場合に抗がん剤治療が選択されます。抗がん剤の影響が神経組織の細胞に及ぶと、その神経系がつかさどっている機能に障害が発生。抗がん剤が自律神経系に影響を及ぼすと内臓の機能が低下し、便秘や下痢が生じることがあります。
抗がん剤を使用すると、手や足など体の末端器官からの情報を脳や脊髄などの中枢器官に伝えたり、中枢器官からの情報を末端器官に伝える末梢神経に障害(ニューロパチー)が起こることがあります。末梢神経には内臓の働きをコントロールしている自律神経が含まれており、そこに障害が起こると内臓の働きのコントロールが難しくなることも。自律神経は、胃や排便を促す腸のぜん動運動に大きく関わっており、通常緊張時には排便が起こらず、リラックス時に排便が起こるように調整しています。自律神経の働きが乱れると食事をしても胃が正常に動かなかったり、腸のぜん動運動が鈍くなってしまい便が滞るように。そのため抗がん剤を使用すると便秘が起こりやすくなってしまうのです。
抗がん剤の使用など治療によって消化器の働きが悪くなると、摂取する食事量や水分量が減ってしまうことがあります。通常食事による刺激が胃に到達すると胃・結腸反射という反射が起こり、腸のぜんどう運動が活発に。その刺激が減ってしまうことが便秘の原因の一つだと言えるでしょう。また、自律神経の障害によるめまいやがん治療による体調不良で横になっている時間が長くなると、便秘がさらに悪化。さらに精神的な要因でも自律神経が乱れを起こします。そのため、がん治療では不安を感じている患者さんの心のケアも重点的に行う必要があるのです。
便秘とは、排便の回数が減っている状態のこと。排便の回数は人によりますが、通常は2~3日に1回から1日2、3回程度です。この回数より少なく、便が出ないことによる苦痛が生じた場合、便秘として治療する必要があるでしょう。大腸がんの治療には複数の種類の抗がん剤を使用することがあります。その中には消化器症状を起こしやすい薬剤があり、がん治療による体力の低下や運動不足なども相まって重度の便秘になってしまうことも。便秘の不快さはがん治療においてQOLを低下させる大きな要因の一つとなっています。
一般的な便秘の解消法は、運動をしたり食物繊維の多い食事を摂取したり、こまめな水分補給をしたりすることが挙げられます。がん治療をしていても水分の補給が可能なら1日1.5~2L程度の水分を摂取しましょう。
がん治療で抗がん剤を使用すると食欲不振や吐き気が強くなることがあります。なかなか一般的な対処法をとることは難しいケースが多いでしょう。体に負担をかけないためにも無理をせずにできることから対処するのが大切です。
胃に食べ物が入るとその刺激によって胃・結腸反射という反射が起こり、腸のぜんどう運動が活発になります。特に、朝食後は排便が起こりやすいため、トイレに行き排便を試みる習慣をつけることが大切です。体調が悪く朝食が取れなかったときでも、大体同じ時間に毎日排便を試みることで習慣がつき便秘解消につながるでしょう。
便秘がひどくなると、食欲不振や吐き気がひどくなります。抗がん剤の使用により腸の動きが鈍くなると、便秘で固くなった便を自力で出すのは難しいかもしれません。重度の便秘は、がん治療においてQOLを低下させる大きな要因の一つであり、便秘によっておこる食欲の低下などは体力の低下にもつながります。便秘がひどい場合は、医師に相談しながら便秘薬の使用も検討しましょう。
参照元:静岡がんセンター
参照元:公益財団法人額田医学生物研究所
参照元:日本脊髄外科学会