
すでに何百年も前から日本の食卓の一部として定着していた椎茸。他のどんな食材にもない独特な風味と食感ゆえ、好きな人は好き、嫌いな人は嫌いという、白黒が明確なきのこでもあります。そんな微妙な立場の椎茸ですが、栄養成分の視点から見れば極めて優秀な食材。骨を強くするビタミンDや腸内環境を整える食物繊維を始め、がんの抑制効果があるとされる「レンチナン」を豊富に含有しています。
椎茸は、ハラタケ目-キシメジ科に属するきのこ(ヒラタケ科、ツキヨタケ科、ホウライタケ科などの異説もあり)。主に日本、中国、韓国における日常食として、広く人気のきのこです。なお椎茸(shiitake)は今や世界語ともなっており、アメリカ、イギリス、フランス、ブラジル、オランダ、フィンランドなどでも、「shiitake(シイタケ)」という名称で販売されています。 椎茸が初めて日本で食用とされたという記録は、室町時代。江戸時代に入ると、早くも栽培が始まるなど、日本では古くからの日常食として親しまれていたようです。
椎茸は、実に栄養豊富なきのこ。炭水化物、タンパク質、ビタミンB群、鉄分、マンガン、亜鉛など、人の健康に必要な様々な栄養素をたくさん含んでいます。それら多彩な栄養素の中でも、特に注目すべきは以下の4つとなるでしょう。
カルシウムと一緒に摂取することで、骨を丈夫にする効果を発揮するビタミンD。椎茸、特に乾燥椎茸には、ビタミンDが豊富に含まれています。生椎茸でも、食べる前に天日に1時間程度さらしておくだけで、ビタミンDの含有量が2倍にもなります。
椎茸は食物繊維が豊富な食材。特に乾燥シイタケの食物繊維含有量は、食物繊維の王様である「乾燥ひじき」に匹敵するほどの含有量です。便秘解消効果、免疫力向上効果、美容効果などが期待できます。
ラットを使った実験によると、エリタデニンには、血中のコレステロールを低下させる働きがあるとのこと。他の種類のきのこに比べると、椎茸のエリタデニン含有量は突出しています。
以下で詳しく説明しますが、レンチナンにはアトピーを改善させる働きや、nk細胞を活性化させて、がんを抑制する働きなどがあるとされています。
きのこ全般に含まれているβグルカンには、がん抑制作用があることが判明済み。海外の研究機関を中心に、すでにβグルカンのがん抑制作用に関する報告は多々存在しています。 特に、椎茸に由来するβグルカンの一種、レンチナンについては、1985年、抗がん効果がある有効成分として厚生労働省から認可を受けています。レンチナンの作用により癌細胞を攻撃するnk細胞が活性化する、というメカニズムです。医療現場では、すでに胃がんなどの治療薬として利用されています。 椎茸を始め、きのこ全般におけるがん予防・抑制効果については、まだまだ研究の途上。今後の更なる発見が期待されています。
栄養豊富な椎茸なので、食べる時には、その栄養を十分に摂取できるような食べ方を意識したいものです。
基本中の基本ですが、上述の通り、生椎茸を食べる際には1時間程度、天日干しをしましょう。ビタミンDの含有量が大幅に増えます。
また、がん抑制効果があるとされるレンチナンは、椎茸の石づき(根元の部分)に特に多く含まれています。石づきは固いので、料理をする際に切って廃棄する方が多いかも知れません。細かく切ってチャーハンに混ぜるなどして、無駄のないように使ってください。
なお、椎茸には油をよく吸う性質があるため、天ぷらにする際にはカロリーオーバーにならないよう要注意。