~よくわかる大腸がんの基礎知識~

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ほうれん草が大腸がんに良いと言われる理由は?

古今東西、老若男女から愛されている食材、ほうれん草。熱することで現れる独特の甘み、どんな料理とも相性の良い汎用性の高さなどを理由に、今や食卓の定番野菜として広く利用されています。ほうれん草の栄養成分で注目すべきは、βカロテン。他の一般的な野菜に比べて、ほうれん草にはβカロテンが豊富。βカロテンは、大腸がんを始めとする様々ながんの予防・抑制に効果的との報告もあります。

ほうれん草とは

ほうれん草とは、ヒユ科アカザ亜科に属する野菜。原産地は中央アジアから西アジアとも言われていますが、その野生種は見つかっていません。具体的には、現在のイランが原産地ではないか、と推測されています。 ほうれん草が日本に伝来したのは17世紀頃。当時は東洋種のほうれん草が伝来し、その後、比較的早い段階で庶民の食卓に普及したと考えられています。19世紀には西洋腫のほうれん草が伝来したものの、日本人の趣向との違いから普及せず。大正末期から昭和初期にかけては東洋種と西洋種の交配が行なわれ、現在の私たち日本人の口によく合うほうれん草が生まれました。

ほうれん草に含有される代表的な成分

ほうれん草に含まれる代表的な栄養成分をまとめました。

βカロテンを補充してがんを抑制する

以前から医学的に知られていたことですが、がん患者の体内のβカロテンの数値は低めです。その理由として、当初は「がんを発症するとβカロテンが少なくなる」と考えられていました。しかし最近では、それとは異なる推論がなされています。

その推論の根拠となったのが、がん患者の家族に対する血液検査。がんを発症した本人だけではなく、その家族の血液検査もしてみたところ、多くの場合、患者と同様に家族のβカロテン値も低いことが判明したのです。これにより「がんを発症するとβカロテンが少なくなる」のではなく、「βカロテンが少ない人はがんになりやすい」との推論が導かれました。

他にも、ほうれん草にはがん抑制に良いとされる抗酸化成分が豊富。日常の食事で、積極的に摂取するようにしましょう。

[※1]

茹でるより蒸す、蒸すより炒める

ほうれん草には様々な調理法があります。しかし、調理法次第では大切なβカロテンが流出してしまうことがあるので、注意しなければなりません。 ほうれん草を炒めた場合のβカロテン残存率は、81~90%。これだけ残存していれば、特に問題はないでしょう。しかし、ほうれん草を蒸した時のβカロテン残存率は、41~50%と大幅に低下。さらにほうれん草を3分茹でると、31~40%まで激減します。

ほうれん草を食べる時には、なるべく炒める調理法にしたほうが良いでしょう。ただし、ほうれん草は、ベーコンと一緒に炒めることで発がん性物質が生成されるとも言われています。シンプルな野菜炒めとして調理することをお勧めします。

参考文献

[※1] 高橋典子,今井正彦,李川『ビタミンAとβ-カロテンによる疾病と予防と治療』(2014年)