
さまざまな効果を持つことから最近注目されているカバノアナタケについてリサーチしました。特徴をはじめ、大腸がんに関する研究結果や体へのメカニズム、注意点をまとめています。
カバノアナタケは白樺の幹に生えているキノコです。寒さの厳しいロシアの土地でゆっくりと成長し、 長い期間をかけて成長します。シベリアの一部の地域では、がん予防にいいキノコとして古くから知られていました。とても希少で、「黒いダイヤモンド」とも呼ばれ珍重されてきたそうです。カバノアナタケは和名で、チャーガとも呼ばれています。
見た目が黒くてゴツゴツしていて、大きいものでは直径30センチになることも。近ごろ、カバノアナタケの研究が盛んになり、その成分の健康効果が認識され始めています。
カバノアナタケには、がん細胞の抑制効果だけでなく、免疫力やウイルスに対する抵抗力を上げる効果を持つとされているのです。タンパク質・脂質・食物繊維・糖質・ビタミン類・ミネラル類・フラボノイド・リグニンなどさまざまな成分を含んでいて、特に注目されているのがβグルカンと抗酸化酵素の2つ。βグルカンには免疫細胞の働きを活性化して免疫力を増強させる効果、抗酸化酵素には活性酸素を除去してがんを抑制する効果があるといわれています。
カバノアナタケががん細胞の抑制に効果があることは、これまで多くの民族に伝えられてきました。最近になって、なぜ効くのかが西洋医学的に明らかになっています。
慶応義塾大学や韓国国立がんセンター、ガチョン大学などに所属する研究者8名が発表した論文によると、カバノアナタケの成分であるエルゴステロールペルオキシドががん細胞の増殖を抑制することが分かりました。研究ではマウスを使ってがん細胞の転移の様子を分析したところ、がん細胞増殖の阻害を確認。また、がん腫瘍の 増殖を抑制する傾向があることも分かりました。
昭和大学に所属する研究者9名が発表した論文で、カバノアナタケエキスにはがんの腫瘍を抑制する効果があることが分かりました。肺がんにかかっているマウスに1日6mgのカバノアナタケエキスを3週間投与して、カバノアナタケの抗がん作用を調べたところ、マウスの60%に腫瘍の縮小が認められています。
がんの自発的な転移があったマウスには、カバノアナタケエキスを与えなかったマウスよりもがんの結節数が25%減少していることも明らかになりました。さらに、腫瘍の固まりの増加と血管に新しく腫瘍ができるのも阻害されることが分かっています。
カバノアナタケを摂取することで、どのような効果が現れるのかを調べてみました。
抗酸化酵素とは、体内で発生する活性酸素の働きを抑制できる酵素のこと。人間がもともと持っている自然抵抗力を高めて、活性酸素に由来するさまざまな疾病予防や老化の予防に役立ちます。カバノアナタケに含まれる抗酸化酵素の含有量はホウレン草の20倍でアガリクスの約2倍。体の衰え対策に役立つ健康食材です。
βグルカンはキノコに多く含まれる成分で、カバノアナタケにはアガリクスやメシマコブの4倍ものβグルカンが含まれています。免疫細胞を活性化する効果が期待できる成分です。健康リスクや抵抗力の低下が心配な方、健康増進を図りたい方の関心を集めています。
1993年の日本エイズ学会の発表により、カバノアナタケはエイズウイルスに有効であることが分かりました。1999年の第51回北海道公衆衛生学会では、インフルエンザウイルスの体内増殖を抑制する効果があると発表されています。
なぜカバノアナタケにウイルスの増殖抑制効果があるのかというと、リグニンという成分がウイルスの出す酵素を吸収して、攻撃できないように阻害するためです。ウイルスは細胞に寄生しないと生きられないので、リグニンによって侵入を阻まれたウイルスは死滅するしかなく、その働きを抑制できます。
カバノアナタケはリグニンの含有量がとても高いキノコです。リグニンは、ポリフェノールと食物繊維の2つの性質を備えています。リグニンは高分子で不溶性のため、本来は人間の細胞内に入り込めませんが、カバノアナタケに含まれている白色腐朽菌によって水溶性に変化。水溶性リグニンとなり、脂肪に働きかけてダイエットサポートをしてくれます。ダイエット茶として注目されているキノコです。
カバノアナタケは食品なので、カバノアナタケを使ったお茶やサプリメントなどでは副作用が起きる心配はほとんどないと考えてよいでしょう。多くの人が副作用を気にすることなく安全に摂取できるといえますが、人によっては合わない可能性もあり注意が必要です。
キノコアレルギーを持つ方は湿疹やじんましんなどが出るおそれがあるので、摂取を避けたほうがいいでしょう。軽度なら数時間で収まりますが、アレルギー反応が強く出た場合は病院を受診してください。また、カバノアナタケは食物性繊維を含んでおり、摂り過ぎて腸内環境が乱れて下痢や腹痛を起こすおそれがあります。もしそのような症状が出た場合は、摂取量を半分にして様子を見るようにするといいでしょう。
[※1] 「Ergosterol peroxide from Chaga mushroom (Inonotus obliquus) exhibits anti-cancer activity by down-regulation of the β-catenin pathway in colorectal cancer.」
[※2] 「Continuous intake of the Chaga mushroom (Inonotus obliquus) aqueous extract suppresses cancer progression and maintains body temperature in mice.」