
健康食品として人気のキノコ「霊芝(れいし)」に含まれている栄養成分に、様々な健康補助効果や抗腫瘍効果があるとして、大腸がんなどの治療方法を模索する人々の間で話題になっています。
霊芝は、古くは中国の後漢時代(西暦25~220年)に編纂された「神農本草経」で、「延命の霊薬」として記述されているように、中国大陸で昔から様々な病気や症状の治療薬として重用されてきたキノコです。また、日本では「万年茸(マンネンタケ)」とも呼ばれ、各地に伝わる民間療法として用いられることもありました。
実際に「霊芝」として扱われるものは、成長して乾燥させられたもので、主に熱湯で煎じたり、薬用酒の原料としたりという使われ方をされます。
霊芝の薬効としては、滋養強壮、解熱鎮痛、利尿、制汗、食欲増進、血圧降下、肝炎緩和など様々なものが挙げられ、また大腸がんなどのがん患者や、脳卒中患者、心臓病患者に対する民間薬としても使われてきました。
一方、霊芝の薬効に対する科学的な根拠はずっと曖昧なままで、例えば抗腫瘍効果の主成分として考えられる多糖類「β-D-グルカン」や、苦味成分「テルペノイド」についての研究は、1980年代頃になってから本格化するようになりました。
霊芝にはカルシウムやマグネシウム、マンガンなど非常に多くのミネラルやビタミンに加えて、さらに人の健康に有益とされる様々な成分が豊富に含まれています。
β-D-グルカン(β-グルカン)は、ブドウ糖(グルコース)が「β-グリコシド結合」で繋がった多糖類であり、霊芝の有効成分の代表です。 β-グルカンについては、公益財団法人日本健康・栄養食品協会が2013年3月に発表した「平成24年度『食品の機能性評価事業』結果報告」において、大麦由来のβ-グルカンに血中コレステロールの正常化や血糖値上昇抑制、満腹感の持続作用などの効果があると認められています 。
また、霊芝から抽出される水不溶性多糖をマウスに投与した結果、顕著な抗腫瘍効果が認められたという研究結果も報告されています。
テルペノイドは霊芝にも含まれる苦味成分ですが、その関連物質として霊芝から抽出されたガノデリン酸類には、抗腫瘍効果や抗ヒスタミン作用があるとされています。
ヒスタミンは花粉症などのアレルギー症状を引き起こす物質として有名ですが、その他にも、大腸がんを発症したマウスを使った実験により、ヒスタミンにはがん細胞の増殖に関与する作用があると示唆されました(※4)。テルペノイドはこのヒスタミンを阻害することにより、間接的にがん細胞の増殖を抑制するという効果が期待されています。
大腸がんをはじめ、様々ながんや病気に効果が期待される霊芝の安全性は、比較的高いとされており、代表成分であるβ-グルカンにも副作用がほぼないと言われています。 一方で、霊芝には他にも、血小板凝集物質「トロンボキサンA2」の生成を抑制し、血栓を防ぐ作用(抗凝固作用)があるとされています。
その為、既に抗血液凝固薬などを使用している人では出血傾向が増大するリスクもあり、実際の使用には医師や薬剤師への相談が不可欠です。
[※1] 中島加代子,他(2008)「霊芝に含まれる抗腫瘍活性物質の精製」
[※2] 石原伸治,他(2004)「ラットにおける霊芝菌糸体の血糖値上昇抑制作用」