「大腸がんの知識」という
武器を身につける
ステージ0
腸の粘膜までのがん
5年生存率:約95%
ステージ1
腸の筋肉までのがん
5年生存率:約92%
ステージ2
腸の外側の膜までのがん
5年生存率:約85%
ステージ3
リンパ節に転移している
5年生存率:約68%
ステージ4
他の臓器に転移している
5年生存率:約20%
大腸がんは、以下のような条件で、大まかに0~4までの5つのステージに分けられます。
大腸の壁は内側から粘膜・粘膜下層・粘膜筋板・固有筋層・漿膜(しょうまく)下層・漿膜の6つの層に分けられます。大腸がんの進行度はがんがどの層まで達しているかを示す深達度をもとに分類。がんが大腸の粘膜内に留まっている場合はステージ0、4層目の固有筋層を超えている場合はステージ2です。リンパ節に転移している場合はステージ3、肝臓や肺など大腸から離れた臓器に転移している場合はステージ4に分類されます。
ステージ0やステージ1といった早期の大腸がんの5年生存率は90%以上と高い数値を示しています。しかし、がんのステージが上がるにつれて5年生存率は低下。ステージ4ではわずか18~20%となっています。
参照元:藤田 伸、島田安博(2011)『国立がん研究センターのがんの本 大腸がん』小学館クリエイティブ.
参照元:国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん 2.病期(ステージ)
初期の大腸がんには自覚症状がほとんどありません。大腸がんは定期検査で見つかる場合がほとんどで、自覚症状による早期発見が難しいのが特徴です。以下のような変化に注意するようにしましょう。
お腹の調子や排便の状態の変化
大腸がんは、早期発見であれば根治できるがんです。気になる症状がある、健康診断で便潜血検査が陽性になったという方は、早急に医師の診断・検査を受けるようにしましょう。
参照元:藤田 伸、島田安博(2011)『国立がん研究センターのがんの本 大腸がん』小学館クリエイティブ. 参照元:福長洋介(2016)『よくわかる最新医学 大腸がん』主婦の友社.
早期の段階では自覚症状がほとんど現れない大腸がんですが、がんが進行してしまった場合、腸閉塞が起きる可能性があります。腸閉塞は腸の一部が塞がった状態のことをいい、激しい腹痛や吐き気・嘔吐などの症状を引き起こし、対処が遅れると死に繋がることもあります。
また、がんが悪化するにつれて他の臓器やリンパ節へ転移する可能性も高くなります。大腸がんは特に肝臓に転移しやすいがんです。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれており、もし大腸がんが転移してしまっても自覚症状はほとんどありません。そのため肝転移の早期発見は難しいとされています。
初期症状がほとんど見られない大腸がんは、末期症状が出てからやっと気づくことや、他臓器や骨に転移して起きる痛みで発見されることも珍しくありません。
参照元:藤田 伸、島田安博(2011)『国立がん研究センターのがんの本 大腸がん』小学館クリエイティブ. 参照元:福長洋介(2016)『よくわかる最新医学 大腸がん』主婦の友社.
大腸は結腸・直腸・盲腸から成り立つ器官です。がんが結腸にあるのか直腸にあるのか、結腸にある場合は左右のどちらにあるのかによって症状が変化。一般的には、肛門に近いほど異常に気づきやすいとされています。
血便比較的分かりやすい赤い血が見える
便通便が細い・残便感がある。下痢と便秘を繰り返す
血便赤黒い血便・粘血便が出る
便通便が出にくい・腹痛がするなど異常が自覚できる
血便肉眼でわかりにくい・見つからない
便通自覚できる異常がほとんどない
参照元:藤田 伸、島田安博(2011)『国立がん研究センターのがんの本 大腸がん』小学館クリエイティブ.
がんの進行度は大腸癌研究会が定めた「大腸がん取扱い規約」をもとに、ステージ0~4の5つに分類されて表されます。
次の表は、標準的に選択される治療法をステージごとにまとめたものです。
このサイトでは、大腸がんになった方や克服した方の体験談を掲載していますが、多くの人が「自分が納得して治療を受けることが一番大切」といっていました。納得して治療を受けるには、まずすべての選択肢を知ることが必要です。ぜひ、参考にしてください。
内視鏡治療または外科手術を行い、その後経過観察を行います。
外科手術を行ったあと、病理検査・病理診断によって化学療法または放射線療法を行うか判断します。
化学療法や放射線療法でがん細胞の活動を抑えながら、必要に応じて対症療法を行います。
参照元:大腸癌研究会 患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2014年版参照元:藤田 伸、島田安博(2011)『国立がん研究センターのがんの本 大腸がん』小学館クリエイティブ.
大腸がんの治療は、主に以下の6種類に分けられます。
肛門から内視鏡を入れて、大腸の内側からがんを切除することを内視鏡治療といいます。主にステージ0からステージ1のがん治療に用いられる治療です。以前はがんの大きさによって内視鏡治療の適応が制限されていましたが、2014年に「大腸癌治療ガイドライン」が改訂。適応基準にがんの大きさが問われなくなり、内視鏡治療を選択できるケースが増加しました。
大腸がんを切除する代表的な方法には、金属の輪を使って腫瘍を焼き切る「ポリペクトミー」と「EMR(内視鏡的粘膜切除術)」、電気メスで腫瘍を切り取る「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」の3つがあります。それぞれの方法の詳しい特徴や適用できるがん腫瘍についてまとめました。また、内視鏡治療でがんを治療するメリット・デメリットについても紹介します。
内視鏡治療で大腸がんを切除できなかった場合、手術療法(外科療法)が用いられます。開腹もしくは腹腔鏡手術を行い、メスを使ってがんを切除する治療法です。開腹して切除を行う場合、医師が目視しながら処置を行えるので、ほぼ確実に腫瘍を取り除けるのがメリットの1つ。しかし、患者の体に大きな負担がかかる、術後に傷跡が残ってしまうといったデメリットもあります。
がんが結腸にあるときは結腸切除術、もしくはお腹に開けた小さな穴から腫瘍を摘出する「腹腔/kinds/ope.html鏡手術」によってがんを切除します。どちらにしても術後の排尿・排便トラブルはほとんどありません。
抗がん剤を使った治療のことを化学療法といいます。内視鏡治療・手術療法ではがんを切除できなかった際や別の部位へ転移してしまって、切除が難しい場合に用いられる治療法です。また、がん再発の可能性が高いステージ3以上の場合、再発防止のために抗がん剤を使用するケースもあります。
延命期間の延長が期待できる化学療法ですが、抗がん剤治療を受けるには適応条件を満たさないといけません。また、副作用が出やすいといったデメリットもあります。副作用による不快な症状を緩和するために、代替医療を平行して行うことも多いようです。
抗がん剤治療の適応条件や使用されることが多い抗がん剤、出やすい副作用について紹介します。抗がん剤の副作用に不安を感じている方へのアドバイスもまとめているので、ぜひ一度読んでみてください。
なお、抗がん剤治療中のQOL向上に役立つ、免疫細胞を活性化する成分についてはがんの免疫療法で取り入れたい成分(外部サイト)で詳しく紹介されているので、興味のある方はチェックしてみると良いでしょう。
がんを切除せず、直接もしくは外から放射線をあててダメージを与える治療法のことです。がんを消滅・減少させるほか、がんを小さくして切除しやすくする、術後の再発を防止するといった効果があります。また、直腸がんの切除手術の前に放射線療法を用いて腫瘍を小さくすることで、切除の範囲を減らすことも可能です。肛門の排泄機能を温存し、人工肛門のリスクを軽減できます。さらに、骨に転移したがんに照射して痛みを緩和するといった使い方もされているようです。
ただ、放射線療法にも副作用が存在します。吐き気や嘔吐、倦怠感といった早期に現れる副作用のほか、放射線療法終了後、数ヶ月~数年以上経ってから見られる副作用もあるのです。
放射線療法の特徴や種類、主な副作用の内容やつらい症状への対策についてまとめました。
緩和ケアとは末期のがん患者のみでなく、がんに伴う痛みや精神的な苦しみに悩む方全員に対する治療・サポートのことで、ステージに関わらず活用されます。適用されるのは患者本人だけではありません。患者をそばで支えているパートナーや家族の中にも不安や心配を抱えている方は大勢いらっしゃいます。がんに負けないためには、カウンセリングを通して精神的な苦しさを緩和することが重要です。
緩和ケアとは患者とその家族のQOL(生活の質)を向上させるために行われます。痛みの軽減・コントロールやカウンセリングを通して行う精神的なサポートが主な内容です。さまざまな施設でがん治療のサポートが行われており、厚生労働省も緩和ケアの推進を促しています。がんの苦しみを緩和する治療・サポートの重要性は非常に高いといっても過言ではないでしょう。
人工肛門(ストーマ)は自分の腸を使って腹部に作る排泄用口のことです。大腸がん手術の際、直腸の排泄機能が一時的もしくは永久的に低下してしまった際に用いられます。ステージに関わらず、がんの場所などによって適応されます。大腸がんを治療する際、人工肛門に不安を感じる方はとくに多いよう。上手く付き合っていくためには、人工肛門についての正確な知識を持ち、しっかりと理解しておくことが重要です。
人工肛門を使った排便の仕方は「自然排便法」と「洗浄法」の2種類があります。詳しい排便方法や排泄後のケア、人工肛門の仕組み、また起こりうるトラブルやよくある質問について次のページにまとめているので参考にしてみてください。
また、人工肛門を取り付けている方が主体となって悩みの相談やサポートといった活動を行う「オストメイトの会」についての情報も掲載しています。
大腸がんの転移や手術後の再発に不安を感じる方は多いでしょう。少しでもその不安を軽減するために、再発・転移の原因や予防対策、がんの再発をできるだけ早く知る方法を把握しましょう。万が一、再発・転移してしまった場合に備えて治療法についても理解を深めておくのもおすすめです。
がん治療において、根治はもちろん術後のQOLの維持や向上も大きなポイントです。QOL低下によるストレスは、がんの転移に影響を及ぼすことも。今後の生活や健康のために、QOLへの理解を深めておきましょう。
食事が大腸に及ぼす影響は大きいので、細心の注意を払うことが大切。術後の食事は体力回復や今後の健康のためにも重要です。術後は消化の良い食材を選ぶようしましょう。規則正しい食生活や栄養バランスへの配慮はもちろん、術後の食事量や避けたほうが良い食品、がんを攻撃する「NK細胞」を活性化させる成分なども紹介しています。
術後の仕事復帰に関してまとめています。復帰するまでの期間や復帰した際に気を付けることなども記載しているので目を通してみてください。また、仕事復帰する前にやっておくと良いことや、術後に仕事復帰した方の体験談などをまとめています。事前に読んでおくと、体に負担をかけない、スムーズな仕事復帰の方法がわかります。
術後、腸の働きを回復させるためには適度な運動が必要になります。ベッドに寝たままでもできる運動から、自分のペースでゆっくりと進めるのが大切です。ベッドから起き上がれるようになったらベッド周辺でできる運動に切り替えると良いでしょう。体に負担を掛け過ぎないために、無理な運動は控えるようにしてください。
手術前にアルコールやニコチンを定期的に摂取していた方は「なかなかやめられない」という方も多いのではないでしょうか。大腸がんの術後に飲酒や喫煙をしても良いのか調べて記載しています。飲酒や喫煙が大腸がんの発生にどのように関わっているかという点についてもまとめています。
術後は便通に変化が生じたり、排便リズムが以前と異なったりします。多く見られるのは下痢や軟便、便秘、排尿困難などの症状です。こういった変化に戸惑いや不安を感じる方も珍しくありません。しかし、これらの症状は時間の経過に伴って徐々に改善されます。薬の服用で改善できることもあるので、医師に相談してみると良いでしょう。
手術よりもつらいといわれる抗がん剤治療
「手術よりも、術後の治療がつらかった」という声も聞かれる抗がん剤の副作用。人によって副作用の重さはそれぞれですが、少しでも軽減したいという人は、ぜひこちらをお読みください。
大腸がんに負けない生活をするために
がん治療を続けながら生活するためには、かかりつけ医を持つことや生活習慣への配慮、行政のサポートサービスを知っておくことが重要です。また、患者本人だけでなくパートナーや家族が利用できるサービスもあります。ストレスや不安を抱え過ぎないことが大切です。
大腸がんと診断される方は年間10万人以上。女性の死因の1位にもなっています。早期に見つけられれば根治が見込めるのが大腸がんですが、自覚症状がないため、自覚症状がほとんどない大腸がんを早期発見するには、定期的に検査を受けることが大切です。しかし、2016年の大腸がん検診の受診率は男性44.5%、女性は38.5%のみと半数にも届いていないのが現状です。
大腸がんは早期発見・早期治療なら根治できるがんです。年に一度は定期検査を受けるようにしましょう。もちろん、再発や転移を早めに知るためにも、定期検査は欠かせません。
参照元:国立がん研究センター がん情報サービス がん検診受診率
当サイト「大腸がんのステージと治療を知る~術前の不安に寄り添い、術後の生活の質を上げる~」は、「大腸がんと告知された人」が安心して治療に臨めるよう、治療の詳細や大腸がん経験者の体験談をご紹介しています。また、手術後の仕事復帰や食生活など、毎日の生活の不便や不安にできる限り寄り添い、少しでも質のいい毎日を送っていただけるような役立つ情報を集めています。
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