
サルノコシカケの一種としても知られるキノコ「メシマコブ」に高い抗腫瘍効果があるとして、大腸がんの治療・改善を願う患者や、その家族の間でも健康食品としての期待が高まっています。 ここでは医学的な研究論文などでも報告されている、メシマコブが持つ性質や特徴などについて解説しています。
メシマコブ(学名:Phellinus linteus)は、長崎県男女群島の「女島(めしま)」に多く自生していたことと、桑の木の古株にコブ状の形で寄生することから、その名前が付けられたキノコです。また、中国では古代から「桑黄」の名前で漢方薬として使われており、伝承的にも人の健康に有益であるとされていました。実際、様々なキノコの持つ腫瘍阻止率について1968年に国立がんセンターが行った調査では、メシマコブ(煎じ汁)が96.7%という高い阻止率を示したという報告もされています。
反面、メシマコブは成長に非常に長い年月を要し、また養蚕業の低迷に伴って桑の木が減少して天然のメシマコブの入手が困難になったこともあり、長らく医療分野での科学的研究は行われていませんでした。しかし、やがて韓国の科学技術省が主導する国家プロジェクトによって研究が進められ、遂にメシマコブを製品として開発することに成功しました。現在では液体培養技術が確立されており、国内外でメシマコブの菌糸体における抗腫瘍効果などが研究されています。
健康なラットを使用した実験により、メシマコブの菌糸体から抽出された成分(PLE:Phellinus linteus extract)が、体内の血糖値の上昇を抑制することが示唆されました。また、膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンの分泌不全に陥っている、糖尿病発症型ラットに対しても、PLEの血糖値上昇が抑制されたというデータも得られています。
これらの結果により、メシマコブには糖尿病の予防や、病気療養中の食生活のサポートとしての効果が期待されています。
メシマコブ菌糸体には、ポリフェノールが約18.1%も含まれているというデータが報告されました(※2)。また、成長したメシマコブ(子実体)でも、ポリフェノール含有量はおよそ5.3%という結果でした。これは、例えばアガリクスの菌糸体(0.44%)や子実体(0.94%)、チャーガ子実体(2.9%)などと比べても格段に高い数値です。
ポリフェノールは、体内で抗酸化作用を発揮したり、NK細胞を活性化して免疫力を強化したりと、美容や健康、さらには医療の分野でも有効性が検証されている成分です。
メシマコブには食物繊維が約43.9%も含まれていますが、その中でも水溶性食物繊維には様々な健康補助効果があると言われています。メシマコブ抽出成分PLEには約6.9%の水溶性食物繊維が含まれており、これもまたメシマコブが持つ健康機能を支えている要素の1つと言えるでしょう。
メシマコブについては、抽出成分PLEがヒトリンパ球系がん細胞(U937)の増殖を抑制するという研究報告が発表されているだけでなく、ニンニクに含まれているレクチンとの相乗効果で、そのがん細胞増殖抑制効果がさらに高まることも示唆されています。
中国では古くから漢方薬として重宝され、韓国ではメシマコブに医薬品としての効果が認められており、抗がん剤として使用されることもあります。しかし、基本的に日本国内でのメシマコブの取り扱いは、あくまでも“食品”です。 大腸がんの治療や再発予防には、専門医や担当医ときちんと相談しながら適切な処置をしていくことが大切です。
[※1] 中島加代子,他(2008)「メシマコブに含まれる抗腫瘍活性物質の精製」
[※2] 石原伸治,他(2004)「ラットにおけるメシマコブ菌糸体の血糖値上昇抑制作用」