~よくわかる大腸がんの基礎知識~

大腸がんのステージと治療を知る
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放射線療法

切らずにがん細胞にダメージを与える放射線療法。ここでは放射線療法の種類や副作用について紹介しています。

参照元:大腸癌研究会 もっと知ってほしい大腸がんのこと[pdf]
参照元:藤田 伸、島田安博(2011)『国立がん研究センターのがんの本 大腸がん』小学館クリエイティブ.
参照元:福長洋介(2016)『よくわかる最新医学 大腸がん』主婦の友社.
参照元:東京放射線クリニック 公式サイト
参照元:がん研有明病院 公式サイト
参照元:放射線医学総合研究所病院 公式サイト

放射線療法とは

X線やγ線、電子線などの放射線を用いてがん細胞を減らしたり、消滅したりすることができる放射線療法。手術で切除する必要がなく、化学療法と併せて治療を行うケースもあります。術後に照射して再発を予防することも可能です。骨にがんが転移した時の痛みを和らげる効果も期待できます。

放射線療法の種類

補助放射線療法

切除できる直腸がんに照射する補助放射線療法。手術療法の効果を高めるために用いられており、手術療法の前にがんのサイズを小さくしたり、骨盤内にある臓器に転移するのを抑えたりすることができます。

緩和的放射線療法

進行したがんや転移したがんなど切除が難しいがんに対して照射する治療方法です。消化器障害や神経障害、血流障害などの症状を和らげるために用いられています。

放射線療法の副作用

早期に現れる副作用

けん怠感や食欲不振など全身に現れたり、放射線を照射した部位に異常が見られたりします。貧血や白血球・血小板が減少して免疫力の低下も。照射線を胃や腸に照射されると、腸内環境が乱れて吐き気や下痢などの症状も発症します。これらの症状は、放射線療法を開始してから早い時期に現れる副作用です。

数ヶ月後に出現する副作用

大腸がんの治療で放射線を照射した後に、副作用として直腸が狭くなったり、出血するといった症状を発症することがあります。膀胱が硬くなり血尿が出ることも。放射線を照射して数か月後に現れるため、がんが再発したと思う人も少なくありません。

放射線療法の副作用がつらい時は…

腸内環境の悪化による下痢や吐き気など放射線療法の副作用でつらい場合は、担当の医師や看護師、薬剤師に相談しましょう。吐き気を抑える薬などを処方してもらうことができます。

大腸がんの転移に対する放射線治療

大腸がんに対する放射線治療の適応は少ないとされていますが、大腸がんから別の部位に転移した場合、放射線治療が有効な例もあります。

ここでは、がんの放射線治療を専門とする東京放射線クリニックが発信する情報に基づき、転移先に応じた放射線治療の例をご紹介します。

転移先に応じた放射線治療

肺転移

同院では、大腸がんから肺に転移したがんに対し、SBRT(体幹部定位放射線治療)を行っています。これは呼吸の動きに合わせ、患部にピンポイントで放射線を当てる治療法です。他に病変がなく、5cm以内かつ3個以内の肺転移の場合には、保険適用内での治療が可能です。

骨転移

大腸がんは骨転移しやすいがんの一つです。骨にがんが転移した場合、患者は痛みを自覚することが多いとされています。同院では、高精度放射線治療により痛みを軽減させることで、患者のQOLの向上を目指しています。

肝転移

消化器系のがんの中でも、特に肝臓への転移が多く見られるのが大腸がんの特徴。同院ではSBRT(体幹部定位放射線治療)による高精度放射線治療により、肝転移の治療を行っています。

リンパ節転移

大腸がんは、一定の法則でリンパ節に転移することが知られています。リンパ節に転移したがんには放射線治療が有効であると言われています。

情報の参考にさせていただいた医療機関

東京放射線クリニック

東京放射線クリニック
https://www.troc.jp/
院長 柏原 賢一
住所 東京都江東区有明 3-5-7
TEL 03-3529-5420
診療受付時間 9:00~18:00
休診日 土曜・日曜・祝日

院長 柏原賢一医師

1982年、京都府立医科大学医学部卒業。徳島大学医学部放射線医学教室講師、Hahnemann大学・Washington大学、愛媛県立中央病院放射線科部長などを経て、2008年より東京放射線クリニック院長に就任。

日本医学放射線学会放射線科専門医、日本放射線腫瘍学会認定医、日本核医学会認定医など、放射線治療に関する専門資格を多く保有。米国放射線腫瘍学会(ASTRO)や北米放射線腫瘍学会(RSNA)にも所属してワールドワイドに活動するなど、放射線治療のエキスパートとして知られるドクターです。

肛門の温存率が高い、がん研有明病院の治療法

難症例とされる進行直腸がんに対し、腹腔鏡下手術による数多くの良好な成績をあげている、がん研有明病院。肛門の温存率の高さでも知られている、大腸がん手術で有名な病院です。

ここでは、がん研有明病院における最新の大腸がん治療について見てみましょう。

術前の化学・放射線療法

大腸がんの中でも、肛門に近い部位に発症する進行直腸がんは、一般的に予後が不良で、再発率も高いことが知られています。しかも、患部が肛門に近いことから、人工肛門の設置を余儀なくされる患者も少なくありません。

この難症例とされる進行直腸がんに対し、がん研有明病院では、すぐに手術を行うことはしません。先に放射線治療と抗がん剤治療により、腫瘍を可能な限り小さくします。その上で、患者の身体的負担の小さい腹腔鏡下手術を積極的に採用しています。

腫瘍を小さくした後に手術を行う方法は一般的ですが、実は進行直腸がんに対して同様の治療を行っている施設は、それほど多くありません。手術のみを行う病院に比べ、同院の治療実績は良好な成績となっています。

また、この治療法を採用したことで、肛門の温存率が上昇したという点にも注目です。同院で治療を受けた直腸がん患者の87%、従来の治療法では永久人工肛門が確実だった下部直腸がん患者の80%において、肛門を温存することに成功しています。

骨盤内の自律神経を温存する正確な手術

特に男性の場合、進行直腸がんの術後に排尿障害や性機能障害が生じることがあります。これは、手術中に骨盤内の自律神経を損傷してしまうことが原因です。

同院では、腹腔鏡を用いて骨盤内の自律神経を拡大して確認しながら手術を実施。自律神経の損傷がないよう、正確かつ丁寧に手術を行っています。

記事の参考にさせていただいた医療機関

がん研有明病院

がん研有明病院
https://www.jfcr.or.jp/hospital/
院長 佐野 武
住所 東京都江東区有明3-8-31
TEL 03-3520-0111
診療受付時間 8:30~正午
休診日 土曜日・ 日曜日・祝祭日・年末年始(12月29日~1月3日)

大腸外科部長 上野雅資医師

1980年、東京大学医学部医学科卒業。その後、同大学医学部附属病院第一外科、静岡県焼津市立総合病院などを経て、1993年、国立がん研究センター中央病院外科に入職。1996年に同医長、2007年に同部長と務めたのち、2008年より、がん研有明病院大腸外科部長に就任しました。

日本消化器外科学会認定医・専門医、日本外科学会専門医・指導医、日本大腸肛門病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医など、大腸を含めた消化器系の専門資格を数多く保有。国内での診療活動だけでなく、ヨーロッパや南米、アジア各国にて、胃がん手術の実習教育にも取り組んでいるドクターです。

大腸がん再発に対する重粒子線治療への期待

大腸がんの再発率は、術後約20%。再発に対する治療には病巣の切除が最優先ですが、現状では、切除不能な症例が大半です。

一般的に、大腸がんの再発に対する放射線治療の効果は低いとされているのですが、放射線医学総合研究所病院では、従来のX線による放射線治療ではなく、重粒子線を照射することにより再発大腸がんの治療を目指しています。

放射線医学総合研究所病院の発信する情報から、従来のX線治療と重粒子線治療との違いを見てみましょう。

X線治療と重粒子線治療の違い

X線と重粒子線の最大の違いは、線が人体を透過するかしないかという点。X線を病巣に向けて照射した場合、病巣を通り過ぎて人体を透過してしまいます。一方、重粒子線は操作によって任意の深さで線を止めることができるため、人体を透過しません。

もともと、X線や陽子線よりも高い殺細胞効果を持つとされる重粒子線。病巣の深さで照射を止めることができるという性質を利用すれば、再発した大腸がんの治療においても、良好な治療効果が期待できるかも知れません。

情報の参考にさせていただいた医療機関

放射線医学総合研究所病院

放射線医学総合研究所病院
http://www.nirs.qst.go.jp/hospital/index.shtml
院長 鎌田 正
住所 千葉県千葉市稲毛区穴川4-9-1
TEL 043-206-3306
新患受付時間 平日 9:00~11:30 / 12:30~16:00
休診日 ※公式HPに記載なし

消化管腫瘍科科長 山田滋医師

1986年、千葉大学第二外科(現・食堂医長外科)にて専門診療にあたったのち、1992年より千葉県がんセンター消化器外科に入職。その後、米国NASA Johnson Space Center、放医研重粒子医科学センター医長などを経て、2010年より放射線医学総合研究所病院消化器腫瘍科科長に就任し、現在に至ります。

日本消化器外科学会認定医、日本医学放射線学会放射線治療専門医、日本外科学会認定医などの専門資格を保有。医師・研究者としての活動と並行し、2014年より千葉大学医学部客員教授も併任するなど、後身の指導にも熱心なドクターです。