
わさびに多く含まれているワサビスルフィニルは、抗腫瘍効果があるという研究結果が出ています。では大腸がんにどのように働きかけるのでしょうか。免疫療法で用いられる「nk細胞」や「樹状細胞」への影響、体内への働きを研究結果をもとにリサーチしました。
正式な成分名は「6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアナート(6-MITC)」です。日本原産の本わさびの根茎に多く、西洋わさびには含まれていません。がんの再発や転移予防に効果が期待される成分として注目を集めています。ワサビスルフィニルの特徴はわさびをすりおろすことで生成され、健康効果を発揮するといわれています。
ワサビスルフィニルには、老化や生活習慣病の進行を早める「活性酸素を抑制してくれる」働きがあります。活性酸素はストレスや喫煙などで発生する体内の「サビ」のようなもの。この活性酸素が発生する前に抑えてしまうので、体の細胞を酸化させることがありません。また殺菌作用があるため、病原性大腸菌O-157やアニサキスなどにも効果的。刺身や寿司を安全に食べられるのは、わさびに含まれるワサビスルフィニルの働きのおかげなのです。
ワサビに含まれているワサビスルフィニルは、がん(抗腫瘍)に対してどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、研究結果をいくつかピックアップしました。
ワサビに含まれるワサビスルフィニルに抗腫療活性および抗炎症作用があるか調べた研究を行ないました。研究結果では、ワサビスルフィニルががん細胞の核粘膜に反応することがわかったそうです。この性質を利用することで、抗がん剤の創薬につながると期待されています。
培養細胞およびマウス皮膚での活性酸素生成実験にてワサビスルフィニルを使用した結果、発がん性物質の抑制が確認されました。また炎症による一過性の白血球の減少を回復させる効果も認められています。
マウスの皮膚細胞を培養し、発がん物質を使用してがん細胞を作りだした後、ワサビスルフィニルを添加。2週間後に結果を確認すると、がん化細胞コロニーの発生を抑制した効果が認められました。
がんの抑制効果があるワサビスルフィニルですが、他にもさまざまなメリットがあります。ワサビスルフィニルの成分が体内でどのような作用するのかというメカニズムを紹介していきます。
ワサビスルフィニルには血流促進効果があります。 血液を固まらせる酵素「シクロオキシゲナーゼ」の活性化を抑え、血管をふさぐ塊「血栓」をできづらくするのです。血栓ができると血液の流れが滞ってしまい、動脈硬化を引き起こすリスクが高くなります。
血流が良くしてくれるほか、体を温める作用もワサビスルフィニルの特徴。冷え性の改善、免疫力を高める効果が期待できます。
2006年、2007年の日本農芸化学会(農芸化学・バイオテクノロジーの研究社や研究機関で組織された団体)において、ワサビスルフィニルが花粉症などのアレルギーを抑制するという研究結果が報告されています。
刺身にわさびが使われるのは、生魚についた食中毒や菌を殺菌するため。またわさびを食べることで、ワサビスルフィニルが体内にいるピロリ菌の繁殖を抑制する効果も期待できます。
ワサビスルフィニルは、本わさびをすりおろさないと生まれません。つまり日本産のわさびを使用しないと、ワサビスルフィニルを摂取することはできないのです。 最近はチューブの加工わさびが主流になっていますが、この中にワサビスルフィニルはほとんど含まれていないので注意しましょう。さらに加工わさびには、保存料や食品添加物といった体に悪影響を与える成分が含まれています。
ワサビスルフィニルが含まれる「本わさび」には大きく分けて、葉・茎・根茎・根の部位に分けられます。本わさびは捨てる部分がないと言われており、すべて食べることが可能。そのなかでもっともワサビスルフィニルが豊富なのは「根茎(こんけい)」です。わさびの根茎は、ごつごつしている部分で茎と根っこの間にある部分になります。 わさびをすりおろす際は、しっかり根茎を使用しましょう。
[※1] 「抗腫療活性および抗炎症作用機構解明によるワサビの高付加価値化」県立広島大学生命環境学部(野下俊朗)
[※2] 「イソチオシアネートによるがん予防の可能性‐細胞増殖の選択制御とその分子機構‐」名古屋大学大学院生命農学研究科食品機能化学研究室(中村 宜督)
[※3] 「香辛料の細胞癌化に対する抑制効果およびその遺伝子機構の解析」鹿児島大学農学部助教授(侯徳興)
[※4] 「わさびおよび加工わさび製品中の6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート含量」金印株式会社より