大腸がんが肝臓に転移した場合の症状や治療法を紹介しています。
参照元:藤田 伸、島田安博(2011)『国立がん研究センターのがんの本 大腸がん』小学館クリエイティブ.
参照元:福長洋介(2016)『よくわかる最新医学 大腸がん』主婦の友社.
参照元:高橋慶一(2010)『大腸がん 手術後の生活読本』主婦と生活社.
肝転移は大腸がんの転移でもっとも多い割合を占めています。肝臓には血液中の毒物を無害化し、栄養分を貯蓄する働きがあります。栄養分を含む血液は胃や腸などの消化管から門脈という血管を通って肝臓へ。この血液にがん細胞が混じって肝臓に達し、増殖すると肝転移が起こります。
肝転移が進行すると、腹水の貯留や両下肢のむくみ、黄疸などの症状が現れます。黄疸は、皮膚や白目が黄色がかった色に変色する症状を指します。黄疸は、肝臓で作られた胆汁が十二指腸に流出するのを、肝臓や胆管にできたがん病巣が妨げるために起こります。さらに黄疸が進むと皮膚が黒ずんでカサカサし、尿も紅茶色に変色します。がんの進行がさらに悪化すると、黄疸がひどくなるほか、上腹部のしこりや圧迫感、痛み、肝機能不全などが起こります。肝臓が大きくなり、腹壁から触れてわかることも。
肝臓へのがん転移が疑われた場合、症状や進度別に切除手術・肝動注療法・熱凝固法・全身化学療法などの方法で治療していきます。
がんを臓器ごと切り離す手術です。切除範囲は、がんの大きさ・進行速度・肝臓の健康状態を見て決定。切除範囲の広い順に葉切断(肝右葉切除、肝左葉切除)、区域切除、部分切除といった手術を行います。肝臓の機能が正常な場合、70%まで切除可能です。がんをすべて切除できれば治療の可能性が高まります。
肝臓に抗がん剤を直接注入していく治療法です。一般的な抗がん剤の投与は点滴や内服が中心ですが、肝動注療法は肝動脈と呼ばれる太い血管に、カテーテルという細い管で抗がん剤を直接注入していく局所療法を取ることがあります。しかし現在では副作用が比較的少ない点や良好な治療効果が得られる点において、全身化学療法で治療する方法が主流とされているため、動注療法を行う頻度は減少しています。
がんを焼く治療法です。患部を切開できない場合に用いられます。がんの正確な位置を確かめたうえで、皮膚の上から特殊な針を刺し、その先端に電磁波を発生させます。次に約90℃の熱を加えることによりがんを変性させ、死滅(凝固壊死)させる治療法です。
複数の抗がん剤を組み合わせて治療していく方法です。この際、原発巣が肝臓である場合の肝臓がんと異なり、大腸がんに対する抗がん剤を使う必要があります。
他のがんと比べ、転移の危険性が低い大腸がんですが、油断せずに、術後5年間は欠かさず定期検診を受けることで、万が一の早期発見に努めましょう。また、生活習慣などによって転移の確率を下げることができます。別ページに予防法をまとめていますので、参考にしてください。