
抗がん剤の副作用による下痢は、長期化すると治療にも影響を及ぼすので、早めに対処することが大切です。ここでは、抗がん剤が下痢を起こすメカニズムから下痢になったときの対処法まで解説しています。
参照元:国立がん研究センターがん情報サービス:「消化器症状:下痢」
下痢は抗がん剤治療の副作用として見逃せない、消化器症状の1つです。下痢が長期間続くと苦痛なだけでなく、治療の妨げや日常生活の質を低下させます。そのため、日頃から下痢を起こしづらい生活を心がけたり、かかりつけの医師や看護師などに相談したりして、できる限り早く対処することが大切です。
抗がん剤による副作用(下痢について)の原因
抗がん剤は腸の運動を調整している交感神経と、副交感神経に影響を与えます。この2つの神経に異常をきたすと、腸の運動が激しくなり小腸や大腸の粘膜に備わっている吸収機能に障害が起こし下痢が引き起こされるのです。また、抗がん剤には免疫力を低下させるという副作用もあるので、腸の粘膜が傷つきやすくなっています。白血球が低下すると小さな傷から細菌が侵入しても対処できず、腸炎を起こしやすくなります。
抗がん剤の副作用で起こる下痢の症状は、普通の下痢と同じものです。しかし抗がん剤治療を開始して1週間目に起こる下痢は、長期化しやすい特徴があるので注意が必要です。下痢になると、脱水症状も引き起こす可能性も。
抗がん剤の中でも、「イリノテカン」と「カンプト」を使用している場合に、下痢の症状が強く出やすくなります。
抗がん剤の中には、下痢を起こしやすいものと起こしにくいものがあります。特に下痢を起こしやすい抗がん剤を、症状が起こるタイミングとともにまとめてみました。
ほかの抗がん剤でも、白血球の数(免疫力)が低下すると下痢になりやすいので注意してください。
抗がん剤の副作用で下痢が起きてしまう場合は、予防策を取ることで症状の発生頻度を下げたり、回復までの時間を早めたりすることができます。まず、腹部を圧迫するようなぴったりとした服装は避けてベルトも緩めに締めるなど、できる限り腹圧をかけないようにしましょう。
また、少しでもだるく感じたり脱力感を覚えたりした場合は、十分に休息を取って体力を回復してください。
ほかにも、腸管に刺激を与える香辛料や脂肪分の多い食べ物は下痢の原因になるので避けるようにしましょう。さらに、消化の遅い乳製品や便通を促す働きを持つ食物繊維の多い食品も弱った腸の負担となるので、摂らないようにしてください。塩分を多く含む食品やアルコール類、炭酸飲料も摂取しないことをおすすめします。
抗がん剤の副作用によって下痢が続くと、のどが渇いたり皮膚が乾燥したりして、脱水症状を起こしてしまいます。そのため、下痢の症状が出た際には、スポーツ飲料をはじめとする水分吸収に優れた飲み物を摂取するようにしましょう。
また腹部を冷やすと下痢になったり、回復が遅れたりするので、衣服やカイロなどで腹部を保温するのがおすすめです。お風呂上りにも注意が必要で、腹巻やお腹にタオルを巻くなど冷えないようにしてください。下痢と白血球の低下する時期が重なると、ちょっとした肛門周囲の傷からでも細菌感染を起こしやすくなります。そのため、ウォシュレットや洗浄綿といった肌に優しい方法で、肛門周囲を清潔に保ちましょう。
下痢の症状が軽い場合は、市販の整腸剤や下痢止めで対処することもできます。ただし、1日4回以上トイレに行かなければいけない下痢や、3日間以上続く下痢の場合は医師に相談してください。