~よくわかる大腸がんの基礎知識~

大腸がんのステージと治療を知る
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黒い便(タール便)は大腸がんや病気のサインなのか?

例えば、黒くてドロドロとした便(タール便)は、大腸がんや胃がんの患者においてしばしば見られる症状の1つですが、単に黒い便が出たというだけでは、必ずしも深刻な病気とは限りません。

黒い便が単に食事の内容による一過性のものなのか、それとも胃や腸内からの出血を示すサインなのか、また出血であってもその原因や出血箇所などについて、きちんと見極めることが重要です。

黒い便は大腸がんが原因とは限らない?

黒くてドロドロのタール便は出血のサイン?

ドロドロとしていて黒い便は、「タール便」と呼ばれ、一般的には、胃や十二指腸から出血していることを示すサインと考えられています。

その為、タール便が出た場合は、胃がん・大腸がん、胃・十二指腸潰瘍、胃・腸炎など様々な病気の恐れがあります。

特にがん家系の人や、胃がん・大腸がん患者の場合、胃や腸内から出血しているということは、がんが進行していることも懸念される為、なるべく速やかに医師の診察を受けることが望ましいでしょう。

黒くて硬い便は腸内環境の悪化のサイン?

腸内環境が悪化し、腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌が増えると、消化・吸収能力が低下して便が黒くなることもあります。

腸内環境の悪化によって便が黒くなっている場合、便が硬かったり、悪臭が強かったりすることもあるので、水分をこまめに摂ることや、食物繊維が豊富な食事を摂取することで、便の状態が改善されるかどうか確認してみましょう。

食事が原因で便が黒くなることもある?

鉄分の多い食材や、チョコレートやイカスミといった色の濃い食品を食べた後は、一時的に黒い便が出ることもあります。特に、貧血の治療薬として鉄剤が処方されている時などは、真っ黒な便が出ることも珍しくありません。

下血と血便!黒以外にも心配な便の色がある?

胃や十二指腸といった、消化器官の上部からの出血(下血)がある場合、便は黒い色になります。しかし、肛門に近い直腸や結腸から出血している場合は、便に混じっている血の色が赤色のままで排便されます(血便)。

血便の原因として代表的なものは、大腸がんと痔です。

また、血便であっても、便に血が付着しているだけなのか、便と血が混じり合っているのか、お尻を紙で拭いた際の血の付き方などによって、出血部位や症状の程度が推察されます。

便を見れば健康状態が分かる!

便は健康のバロメーター

海外には、「人の体は食べたものによって作られる」ということわざがありますが、便は基本的に食べたものによって作られます。つまり、便を見れば、その人の体が今どうなっているのかについて、多くの情報を得ることが可能です。その為、便は健康のバロメーターであるということもできるでしょう。

便のタイプで分かる!?あなたの便秘のタイプとは?

一口に「便秘」といっても、その理由は様々です。しかし、排便時の状態や、便の形状などを確認することで、便秘の種類を知ることができるかも知れません。

機能性便秘

胃や小腸、大腸と、消化器官の機能低下が原因となって起こる便秘です。

機能性便秘には、一時的な急性便秘、日常的に便秘が続く慢性便秘、薬物の副作用による医原性便秘の3種類があり、さらに慢性便秘は弛緩性便秘、けいれん性便秘、直腸性便秘の3つに分けられます。

急性便秘

大腸は、膨張・収縮を繰り返して内容物を送り出す「蠕動(ぜんどう)運動」を行っていますが、この動きに異常を来すことで一時的に引き起こされる便秘の総称が急性便秘です。

原因としては、食事の内容や脱水症状、ストレスや病気、ダイエットによる食事制限など色々なものが挙げられます。

便の形状は、細かったり、ころころとしていたり、硬かったりと様々ですが、基本的には数日から1・2週間程度で正常に戻ります。

弛緩性便秘

慢性便秘の中でも、大腸の蠕動運動が弱まったり、腹筋の筋力が低下することで便が押し出せなくなったりすることが原因の便秘が、弛緩性便秘です。高齢者や、経産婦などに見られる症状であり、排便できたとしても細い便や残便感などが特徴です。

けいれん性便秘

過度な緊張や不安といった精神的ストレスや、睡眠不足や過労といった肉体的ストレスが原因となり、自律神経に乱れが生じて、慢性的な便秘になることもあります。それが、けいれん性便秘です。けいれん性便秘では、腸の運動が異常を来して便通が悪くなっており、コロコロとした硬い便が多くなります。

また、下剤を使い続けることで、腸の動きが過剰に促進されて引き起こされている場合もあり、便秘と下痢が交互に繰り返されることもあります。

直腸性便秘

直腸性便秘は、便が肛門のすぐ上部に当たる直腸まで来ているにも関わらず、「ウンチをしたい」という便意が、正常に脳へ伝わらないことが理由で起こる慢性便秘です。

トイレに行くことを普段から我慢しすぎたり、浣腸を乱用したりすることが原因となって起こる便秘です。

その為、仕事の都合でなかなかトイレに行けなかったり、普段から便意を我慢するクセがあったりする人は、注意しなければなりません。

出そうで出ないという便秘でなく、そもそも全くトイレに行きたいと感じられないような人は、直腸性便秘を疑って医師の診察を受けることが望ましいでしょう。

医原性便秘(薬物性便秘)

医原性便秘は、別の病気を治療する為の薬の副作用によって生じている便秘です。

鎮痛剤や制吐剤で腸の機能が抑制されたり、抗がん剤で自律神経に乱れが生じたりすることで、医原性便秘は引き起こされます。

原則的には、薬の使用を中止することで症状が緩和・改善されることが特徴です。とはいえ、がん患者では投薬を止めることが難しい為、基本的には下剤などによる排便コントロールが欠かせません。

器質性便秘

器質性便秘は、腸の病変が原因で起こる便秘です。

大腸がんや腸炎、腸閉塞などによって、便の通り道となる腸管が狭窄したり、先天的な異常で腸の形状や長さに問題があったりする場合、器質性便秘になる可能性が高まります。

器質性便秘では便が細くなったり、硬くなったりというだけでなく、下血・血便が見られたり、腹痛や膨満感が生じたりと、色々な症状が一緒に現れることも少なくありません。

症候性便秘

甲状腺機能の低下など、病気が原因で大腸の蠕動運動が弱まって便秘になることもあります。また、女性の場合は生理や妊娠中のホルモンバランスの変化が原因であることもあります、

この他にも、神経損傷や、糖尿病の合併症によって自律神経に異常を来している可能性もあるでしょう。