~よくわかる大腸がんの基礎知識~

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大腸がんの抗がん剤治療で発症率が高い口内炎について

抗がん剤治療によって発症する副作用に口内炎があります。一見、軽度の症状に思えますが、重症化するとがん治療に悪影響を及ぼす可能性があるため侮ってはいけません。ここでは、抗がん剤治療によって起こる口内炎の原因や予防法についてお伝えしますのでご一読ください。

参照元:重篤副作用疾患別対応マニュアル「抗がん剤による口内炎」:(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/dl/s0325-10m_0001.pdf(PDF)

参照元:日病薬誌「がん科学療法領域における薬剤師の取り組みと成果」:(https://www.jshp.or.jp/banner/guideline1.pdf(PDF)

参照元:京府医大誌「がん化学療法に伴う副作用に対する漢方薬の有用性」:(http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/jkpum/pdf/125/125-2/yoshida1252.pdf(PDF)

抗がん剤による副作用(口内炎について)

抗がん剤治療には下痢や、吐き気、悪心、末梢神経称が、味覚異常、倦怠感などさまざまな症状があります。実際に、京都府立医科大学附属病院が行なった研究によると、抗がん剤による副作用において、口内炎は上位を占めていることが明らかになりました。

2013年に調査した論文によると、軽度から中級程度の症状で抗がん剤治療が必要な患者に限定して調査を開始。各種類の副作用の発症率を調べました。結果は、便秘(52%)、口内炎(39%)、嘔吐(16.5%)、末梢神経障害(15.8%)という統計データを算出。

また、入院患者を含めた口内炎の発症率を調べたところ、抗がん剤で発症する確率は40%でした。頭頚部の放射線治療と併用する場合であれば100%近い確率で口内炎を発症することが明らかになりました。研究結果から、抗がん剤治療における口内炎は、高い確率で発症する可能性があります。以下に口内炎ができる原因と症状、予防法などを記載していますので参考にしてください。

口内炎の原因

抗がん剤治療や、放射線治療を行なうことにより、口内にフリーラジカルといわれる活性酵素が発生します。フリーラジカルが、口内組織を酸化させるのが直接の原因です。フリーラジカルによって、口腔内は酸化障害を起こしてしまいます。すると、粘膜に炎症が発症し、口内炎になります。口内炎が発症すると腫瘍壊死因子が活性化されて痛みが発生。痛みと同時に口腔内の免疫力も下がるため、放置したままだと重症化し、食事摂取障害やがん治療に悪影響を及ぼします。そのため、抗がん剤治療を行なっている人で口内炎を見つけた場合は、重症化する前に治療するようにしましょう。

症状の特徴

口内炎の症状には、口のなかが痛い、出血、熱いものや冷たいものがしみるといった症状があります。他にも、口の中が乾燥している、赤くなって腫れている、飲み込みにくい、味がかわるといった症状も。上記のような症状があるときは、医師や歯科医師に相談するようにしてください。抗がん剤治療を開始してから10日以内に発生することが多いとのこと。痛みにより食欲低下、会話がしづらくなり、精神的な苦痛に変わる前に口内炎の治療をすることが大切です。

口内炎の種類

口内炎とひと口にいっても、さまざまな種類の口内炎があります。

ウイルス性口内炎

抗がん剤治療に伴う免疫低下で最も発症しやすいのが口内炎です。初期症状は、水疱ですが進行すると潰瘍に変わって痛みを生じます。

口腔カンジダ(真菌)症

ウイルス性口内炎と同様に、口腔内の免疫低下によって発症します。口腔粘膜に白苔を生じるのが特徴。剥離を起こしやすく、潰瘍性病変となり激しい痛みを伴います。

薬疹または薬物性口内炎

原因薬剤摂取後の数時間以内に口唇、口腔粘膜、紅斑に水疱が生じます。抗がん剤のアレルギー反応によって生じる口内炎です。

口腔の結核

がん患者は、免疫機能が著しく低下しているため、結核も発症しやすいのが特徴です。結核菌が粘膜に付着し、壊死させて潰瘍を形成します。

予防法

口内炎は予防処置が大切です。口腔内を清潔に保ち、菌が発生しないようにすることが口内炎や二次感染の予防や重症化を防ぎます。

うがいによるケア

うがいをすると、口腔内を清潔に保てるほか、保湿効果も期待できます。殺菌消毒剤が含まされているほか、うがい剤は、抗炎症作用によって口腔内の炎症を抑制。起床時や毎食後、就寝時など1日7~8回を目安にうがいをしましょう。

口腔ケア

歯磨きだけでなく、ブラッシングによるケアが大切です。菌のエサとなる歯石や歯垢を落とすようにケアしてください。使用する歯磨き粉は、メントールやアルコールが含まれない低刺激性のものがおすすめ。歯ブラシも、軟毛、超軟毛で動かしやすい歯ブラシを使うようにしてください。