
大腸がん(直腸がん・結腸がん)の患者では、便に血が混じる血便が見られることも珍しくありませんが、血便は痔などを患っている人でも見られる症状です。 大腸がんは発見が早ければ早いほど治る可能性も高くなります。その為、その血便が本当に大腸がんのサインなのか、それとも痔によるものなのか、見極めることができたとすれば、それは大腸がんの治療を行う上で非常に有益といえるでしょう。
参照元:国立がん研究センターがん情報サービス,「大腸がん(結腸がん・直腸がん)」[online]https://ganjoho.jp/public/cancer/colon/print.html(2018年7月26日参照)
参照元:瓜田純久(2011),「吐血・下血」[online]https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/100/1/100_208/_pdf(2018年7月26日参照)
参照元:日本大腸肛門病学会(2014),「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)診療ガイドライン」[online]https://www.coloproctology.gr.jp/files/uploads/%E8%82%9B%E9%96%80%E7%96%BE%E6%82%A3%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B32014-2%E5%88%B7.pdf#search=%27%E7%97%94+%E8%AB%96%E6%96%87%27(2018年7月26日参照)
胃や十二指腸などから出血している場合、便は黒く変色したものとなりますが、大腸がんで出血していたり、痔によって肛門付近から出血していたりすると、便には赤い血が混じって出てきます。
尚、黒色便(タール便)が出ている場合、それは「下血」と呼ばれ、赤い血が混じっている場合、それは「血便」と呼ばれます。
直腸や結腸に発生しているがんによって出血している場合、便に混じっている血液はまだ鮮やかな赤色を保っている場合が多く、黒色便との違いも明らかです。
また、腸内からの出血は、腸内を移動しながら老廃物と一緒に便としてまとめられる為、血は便と混ざり合って、全体的に赤い便、赤い筋が入っているような便、赤い上にどろりと粘性を持っているような便などが排出されやすくなります。
ただし、大腸がんでも結腸の上部に発生したがんや、大腸がんに伴って別の場所で炎症やがんが生じている場合、黒色便が出ることもあるので注意しましょう。
肛門の外側や内側にできた痔や、切れ痔など、肛門に近い場所からの出血の場合、血は排便の際に便へ付着することになります。
その為、色は鮮やかな赤ですが、血は便に混じり合っているというよりも、便の表面の一部に付着していていたり、お尻を拭くたびにトイレットペーパーに血が付着したりというようになりがちです。また、出血がひどくなればお尻から血が垂れる場合もあります。
ただし、注意しなければならないのは、肛門のごく近くに発生しているような結腸がんであれば、血便の様子はむしろ痔の場合と同じ状態で見られる可能性があるということです。
その為、仮に便に血が付着しているだけの場合でも、可能であれば医師の診察を受けておくことが望ましいでしょう。
尚、痔による出血の場合、排便時に痛みを感じることも特徴として挙げられます。
どろりとした黒い便が出るようになった場合、それは胃がんや大腸がん、胃・腸炎、胃・十二指腸潰瘍などの可能性が高いと考えられます。
黒い便は食事の内容や腸内環境の悪化、便秘の影響でも見られることがありますが、粘性のある黒色便が出た場合は、念の為、速やかに病院で検査を受けることが大切です。
痔といっても、その部位や症状によって幾つかのタイプに分けられます。
肛門の外側や内側の粘膜に血が溜まること(うっ血)で生じる、いぼ状の痔です。外側のものが外痔核、内側のものは内痔核とよばれます。
特に内痔核では、排便時に痛みがないこともあり、大腸がんによる血便と間違われることがあるので注意しましょう。
肛門の内側から、肛門の周辺にかけて細菌感染などにより炎症が生じて膿が溜まり、それが破裂することで生じる「トンネル」が痔瘻(じろう)です。
痔瘻は一般的に自然治癒が難しいとされており、痔瘻に伴う炎症が長期化した場合には新しいがんのリスク要因にもなります。自覚症状がない場合もありますが、基本的に痔瘻は手術でなければ治療することができない為、下着に膿などが付着するようになった場合、医師の診察を受けることが肝要です。
尚、痔瘻は男性に多く見られる痔です。
切れ痔として知られる裂孔は、男性よりも女性に多い痔とされており、特に20~40代頃の女性によく見られます。
排便時だけでなく、排便後にも痛みが残ることも特徴です。出血量はそれほど多くないものの、切れ痔が慢性化すると肛門が硬くなったり潰瘍になったりして、肛門が狭くなってしまう原因にもなり得ます。
肛門ポリープは肛門付近にできる、いぼ状の突起物です。しばしば内痔核と間違われますが、痔ではなく、炎症や切れ痔が原因で粘膜組織の一部が変形して生じるものです。
通常、肛門ポリープから出血することはありませんが、ポリープが肥大すると付け根が避けて出血することもあります。
肛門ポリープのように、大腸の粘膜が変形してポリープになったものが大腸ポリープです。また、大腸ポリープのある人では血便が出ることもあります。
大腸ポリープには良性のものと、やがて大腸がんに発展する悪性のものがありますが、大腸がんのリスクを減らす為に、ポリープが見つかった時点で切除してしまうことが一般的です。
大腸ポリープでは、開腹手術のような大げさな処置でなく、内視鏡による切除が可能です。
その為、便潜血検査や大腸カメラによって、大腸ポリープが発見された場合は、なるべく早く内視鏡によってポリープを取り去ってしまうことが望ましいでしょう。