
「椎茸は苦手だけど、舞茸は好き」という人が多いようです。椎茸のような独特の風味はなく、しかしながら、しっかりとした個性ある味わいと食感を持つ舞茸。年配者だけではなく、若い人たちからも広く人気のきのこです。近年、その舞茸にがん抑制効果があるとの研究成果が次々と報告されています。舞茸に豊富に含まれるβグルカンにnk細胞を活性化させる働きがあるから、というものです。美味しくて体に良い舞茸。さらなる研究の進展が期待されています。
舞茸とは、担子菌門トンビマイタケ科のきのこ。日常的な食用として、世界中でとても馴染み深い種類のきのこです。日本では、炒め物やなべ料理、天ぷらなどで好まれています。 舞茸は、食材としてだけではなく、薬理効果の実験対象としても長く研究対象とされてきました。これまでの国内外における実験では、「乳がん患者のnk細胞を活性化」「がん細胞のアポトーシス(細胞自殺)を誘導」「血糖値を下げる作用」など、様々な効果が確認されています。
舞茸に含まれている代表的な成分の種類は、他の食用きのこに含まれているものと、大きな差はありません。具体的には、次のような成分が多く見られます。
これら成分の中でも、舞茸に際立って多く含まれているものがβグルカン。舞茸以外にも、アガリクスや霊芝、メシマコブなどに多く含まれている成分です。
舞茸以外も含め、きのこ類にはβグルカンと呼ばれる成分が含まれています。このβグルカンにがんを抑制する作用があるのではとの推測のもと、「株式会社雪国まいたけ」が36種類のきのこを使用し、それぞれの抗腫瘍性を動物実験で確認。その結果、舞茸の抗腫瘍性が際立って高いことが判明しました。
βグルカンを精製すると様々な物質が得られるのですが、これら物質をA、B、C、D…、と順番に命名したとき、4番目のDに位置するβグルカンに最も高い抗腫瘍性があることを確認。これをMD-フラクションと名付け(Mは舞茸の頭文字)、1998年、同社は特許を取得しました。
MD-フラクションの抗腫瘍性は、実験動物だけではなく人にも効果があることが判明しています。一定期間、MD-フラクションを投与した臨床試験において、乳がん・肺がんでは約70%の患者に、肝臓がんでは約50%の患者に腫瘍の縮小が確認されました。 これら効果の背景には、MD-フラクションによるnk細胞の活性化があるとされています。
舞茸に含まれるβグルカンは水溶性です。水溶性とは、水に溶けだしてしまう性質のこと。よって、鍋料理などで舞茸を煮た場合には、βグルカンの多くが汁の中へと溶けだしてしまいます。 ただし、βグルカンは、熱で破壊されることはありません。よって煮汁の中に溶けだしている状態となります。舞茸を煮た場合には、煮汁までしっかりと摂るようにしてください。味噌汁等に具として入れた場合も同様です。また、炒め物にする際には、炒め汁もしっかりと摂るようにしてください。
舞茸が持つβグルカンを最も無駄なく摂ることができる料理は、舞茸の炊き込みご飯かも知れません。ぜひお試しください。 なお、βグルカンを最大限に摂取する目的で生食をすることは厳禁。舞茸の生食には、食中毒を起こすリスクがあります。